多汗症 大阪大学医学部附属病院在職中より多くの多汗症治療を担当してきました。その豊富な治療実績をもとに、当院では多汗症の専門外来を開いております。現在、当院では手術は行っていませんが、個々の症状に合わせた適切な治療を提案・提供しています。 「たかが汗」と思わないで。多量の汗は、通常の日常生活を妨げ、患者さまを苦しめます。 多汗症とは、顔や頭、手のひら、腋の下、足裏などに異常に多量の汗をかく状態をいいます。 普通の人でも、暑い日や運動後には全身に汗をかきますが、多汗症の患者さまはわずかな緊張や何らかの刺激により、 手のひらや足裏など体の限定した場所に短時間でたくさんの汗をかきます。 局所多汗症の種類 手掌多汗 手に汗をかくことにより、物や人との接触に大変気をつかいます。手掌の発汗は、生命予後には影響しませんが、握手やその他、人との接触に関して日常生活、社会生活に支障をきたします。 顔面・頭部の多汗 緊張した時に、頭や顔から汗が噴き出します。人前にでると発汗量が増加し、気になると電車などに乗れなくなる人もいます。気が弱い、神経質、こころもとないと思われるのではないかという心配が、ストレスとなります。 腋多汗 腋の汗は洋服に汗染みをつくります。特に夏は汗染みが気になって色物のTシャツなどが着れない人も。腋に塩が吹いた状態になることがあります。 足底多汗 足裏の汗で靴下がびしょ濡れになります。靴に汗じみができたり、素足で歩けないなどの支障も。 多汗症は病気です。治療することができます。 多汗症は病気であることを世間はもちろん、皮膚科医でさえも認識していないことがあり、「気のせい」とか「心の持ちよう」などで片付けられていたことが多かったようです。たくさんの治療方法がありますが、全てに優れた治療法はありません。治療法それぞれにメリットとデメリットがあります。実績のある医師の診察を受け、最適な治療法を選ぶことが大切です。 多汗症はどうすれば回復するのか? 多汗症の治療は大きく分けて、以下の3つに分類されます。 1.脳の興奮を抑える 精神的緊張が発汗を増加させるため、精神安定剤の内服や自律訓練法などのリラクゼーションなどが有効な場合があります。汗に対する考え方を少し変えることができれば、脳の興奮具合が抑えられ発汗を減少させることができます。 2.発汗命令の伝達経路を遮断する 汗の伝達経路を遮断することにより、汗腺に汗を出せという脳からの命令をブロックして汗を止めます。上半身の場合は、星状神経節ブロック(一時的な効果、繰り返し行う)や胸腔鏡下交感神経切除術(一回の施行で半永久的な効果)などを行います。どの方法もメリットとデメリットがあるため、慎重に選択する必要があります。胸腔鏡下交感神経切除術について内視鏡を使用した胸部交感神経切除術は、多汗症の治療のうち最も効果が迅速かつ劇的に現れる方法です。手のひらや顔の汗は背骨の前方にある胸部交感神経節により支配されています。この中継所である交感神経節、交感神経幹を直接内視鏡で見て電気的に焼き切ることにより、汗の命令を遮断し発汗を停止させる方法です。私は、大阪大学医学部附属病院とその関連病院において、数百例の多汗症患者さんを実際に執刀してまいりました。この手術の特徴は、手のひらや顔面の発汗が手術直後から劇的に止まることですが、上半身の発汗が完全に停止するため下半身に汗が増えること(代償性発汗)は避けられません。たくさんの症例を重ねるうちに、代償性発汗により、日常生活に支障をきたすひとが、少なからずいることもわかってきました。この手術にて交感神経を切除すると、元にもどすことはほぼ不可能です。後戻りできない手術であるため、手術を受けられる際には、専門家の診察を受け、手術を受けることによるメリットだけでなくデメリットについてもよく相談しておく必要があります。 3.汗腺を変化させ、汗を出にくくする 汗がでてくる腺(汗腺)に変化を与え、発汗を減少させる治療方法があります。代表的なものが塗り薬で、腋の多汗症には抜群の効果があります。 多汗症の苦しみや悩みは本人しかわからず、思いのほか根が深いものです。ひとりで悩まずに、ぜひご相談ください。